──ブルーと別れたあと、アリシアは施設の厨房を訪れた。
全てのスタッフを含め三百人の腹を満たすための厨房には、広さだけでなくあらゆる調理機材が設置されている。
「さーて、と……」
アリシアはきりりと目を吊り上げ、腕まくりをする。
明るい栗色の髪を後ろで束ね、淡い黄色がかった瞳で食材を目の前にレシピを睨み付けた。
誰もいない厨房の片隅、オーブンの近くにどっかりと腰を据えレシピの写真に笑みを浮かべる。
「明日はケーキでも作ってあげよう」
間違いのないようにしっかり計らなきゃと鼻息荒く計量器を睨みつけた。
しかし、アリシアは一向にケーキ作りを始める気配がない。
「はあ~……。わかんない」
そうなのよね。
私、ピアノばっかり弾いてて、料理なんかしたことが無かったのよ。
こないだのクッキーだって、ベリルの優しさからだわ。
「美味しい」って言ってはくれたけど、あれはとてもじゃないけれど美味しいなんて代物じゃなかったわ。



