──数日後

「ブルー教官!」

 ベリルとの訓練のあと、廊下を歩いていたとき後ろから女性の声で呼び止められる。

 振り返るとピアノの講師で呼ばれたアリシアが少し緊張した面持ちで立っていた。

 ブルーは元兵士ということで他の専門家たちからも敬遠されがちだ。体格の良さや鋭い存在感からか親しく話しかける者もほとんどいない。

「アリシア先生」

「あの……。ベリルの様子はいかがですか?」

「別段、何もありませんよ。何か変わったことでも?」

「いいえ。そういうんじゃないんです。ただ、ちょっと気になっただけで」

「気になった?」

 彼女の言葉にブルーはやや眉を寄せる。

 他の人間と違い自分は遅れて入ってきた。

 ベリルの事については訓練時以外、よくは知らない。