それから数週間後、
「ベルハース!」
「ハロルドか」
ベルハースの前に現れたのは三十代の男性。
馴染みの間柄らしく、懐かしさに抱き合う。
彼はハロルド・キーロス、栗毛と青緑の瞳が印象的な言語学者だ。
少々、偏屈な所はあるが言語に対する研究には人一倍熱心な学者である。
二人は十ほども歳が離れているが同じ大学にいた事もあり十年以上前の学会で意気投合して以来、今も仲の良い友人関係だ。
「そうか、お前が選ばれたのか」
何かを含んだ物言いにハロルドは口の端を吊り上げる。
「なんだ? 私では不服か」
二人は笑い合いながら廊下を歩いた。
歩いている間に視界に入ってくる施設や部屋に、自分のいた大学とは雲泥の差だなとハロルドは薄く笑う。



