「ただ──」

 ベリルはふと、

「私の持つ知識が意味を成さない事に多少の悔しさは感じます」

「……ベリル」

 どれだけ学ぼうとも、それを活かせる場所は無い。

 それでも少年は学ばなければならない。それが彼に与えられた仕事なのだ。

「学ぶ事自体はとても楽しい。けれど時折、虚しくなる事もあります」

 そんな言葉にどう返せばいいのか解らない。

 どんな言葉もベリルを慰めるものにはならない。

 誰にも応えられないものに彼も期待はしていないのだろう。

 誰かを困らせたい訳でもない。

 だからすぐに、「大丈夫だよ」と言うように小さく笑みを見せる。