ベリルは誰も憎んではいない。

 僕なら、生み出した科学者たちを憎んでいたかもしれない。

 だけど、彼は逆だった──

「憎む? 何故」

「何故って、生まれなかったらこんな所に閉じこめられなくても済んだだろう?」

「それは違う。彼らがいなければ、私はここに存在することすら出来なかった。あなたとも出会わずにいた。この記憶も無い」

 全ては同時に起こっている、どの未来が現実になるかは解らない。

 ほんの少しズレれば、私は存在する事も出来なかった。

「私がもし、あなたと同じ人間として産まれていたならば、それは私ではない」

 君は強いね。

 僕は君を生み出した科学者たちに少し憎しみを抱いていたのに、君はそれをあっさりと消し去った。