箱庭の螺旋-はこにわのらせん-


 赤子は数ヶ月後に言葉らしき声を発する。

 ほとんど泣きも怒りもしない赤子に、授乳役の女性は言いしれぬ恐怖を感じていた。

 彼女の名はマーリン──国は産まれてすぐの子供を亡くした単身の女性を探していた。

 身よりもなく、子供を亡くした悲しみに未だ癒されない女性──それが彼女だった。

 人工ミルクだけでは不十分だという報告に急遽、彼女は選ばれた。

 彼女は「特別な子ども」と聞かされていたためある程度の納得はしているものの、異様な感覚にさいなまれる事があった。

 研究施設から離れた建物に半ば軟禁状態にされ、授乳時のみ赤子を手渡された。

 授乳期間が終ったと同時に施設から追い出されるように元の家に送られる。

 この時点では、キメラに関係していてもまだ施設の外に出される事は許されていた。