箱庭の螺旋-はこにわのらせん-

「そうだな──賭けだよ」

 しばらく沈黙していた教授が低く発する。

「賭け?」

 ベルハースは監視カメラから送られてくる映像を一瞥したあと、片目を眇めた。

「あの子は死ぬまでここを出られない」

 ぼそりと発した言葉にマークはハッとした。

 それは初めての声色だった。

 威厳に満ちたものではなく、どこか不安を抱えたものだ。

「我々は彼が生まれた瞬間、歓喜した。そしてその後の事を考えた」

「教授」

「人間で言えば感受性の強くなる年頃だ。それまでは年に数日の輩など気に懸ける対象ではなかったが、これからはそうはいかん。友達もいないのではな」

 相手は誰でもいい訳ではない──そう言って教授はコーヒーを一口味わいマークを見据える。