いつも通りの朝。



教室のドアを開けると一目散に親友の美波がとんできた。


『おはよ!つばさ!今日は席替えだよね⁉︎』


美波は嬉しそうにそう言った。



私は『そうだね。誰と隣になるのかなー?』と言うと



『それそれ‼︎マジでめっちゃ気になるんだけど!ノリ悪い奴とかだったら嫌だなー!席替えなんて3ヶ月ぶりだし!』



そう、私のクラスでは席替えは担任の先生の気まぐれで行われる。
いつやるかわからないし、長い時では5ヶ月以上も延期される。




『そうだねー。でもあんまりうるさすぎると逆に迷惑だよねー!笑』


『確かに!笑』


なんて会話してると先生が教室に入ってきた。




『ほら!席につけー!今から席の順番決めるぞー!』





そして決められた席に移動。




私は窓側の列の1番前だった。





親友の美波ともだいぶ離れて私としては最悪としか言いようのない席だった。





隣の席になったのはルックスは某イケメン俳優に似ているが基本無口の喜田。





女子からはめちゃくちゃモテるが、
あまり女子とは話さない。興味が無いらしい。




いつもムスっとしていて、
愛想のない人だ。




けど私はこの喜田とは少し関わりを持っている。



同じクラスになったばかりの頃、
仲のいい男子の繋がりで喜田とインターネットで会話したことがある。




ネットと現実では多少印象は違ってたが、話してみると面白くて話しやすい。



ただ、実際リアルで話したことは一度もない。


話そうと思ってもどこか壁を感じるし、私自身、学校では無口で暗い陰気キャラとして学校生活を送っているため、
なかなか人前で他の人に話しかけるなどできないのだ。



私が話すと『○○がしゃべった!』などと物珍しそうにされる。




それが嫌と言う理由も含め、とても話しかけられなかった。





私がなぜこんなキャラで学校生活を送っているのかというと、私は去年、いじめにあい学校に行けていなかった。要するに『不登校』というものだ。



いじめにあい、人を信じられなくなり、人というものに恐怖を感じた私は心を閉ざしてしまったのだ。



友達は親友の美波だけ。
他はみんなうわべだけ。深く関わってもいつか裏切られる。去年痛いほど思い知らされた。




だからといって家でも無口な陰気キャラなわけではない。家ではいつも通りの自分。むしろ私の『素』は明るい方だと思う。唯一昔から私の素を理解してくれてるのは美波だけだ。以前美波は私は明るい性格の持ち主だと言ってくれたことがある。




けれど、私のこの裏表ある性格を理解しているのは美波だけではない。



隣の席の喜田も私の『素』を知っている。