いつの間にか隣には湊が移動して来て。
「喜嬉はこういうやつだから。だから顔を上げなよ」
「でも…」
「いいから。な?」
「本当にごめん…」
そして去って行ったぶりっ子。
結局大した用ではなかったようだ。
「許せる喜嬉は偉いな」
「ん」
「うーん、イイ子‼︎」
わたしの頭を撫でる湊。
これが意外と落ち着く。
「あ!そうだ‼︎もうひとつ言っとく‼︎」
出て行った扉から、顔を出したぶりっ子。
…まだ居たのか。
「あたし、湊君のこと諦めないから‼︎正々堂々、勝負よ‼︎」
「ふーん」
「な、むかつく‼︎」
「………」
「精々あたしに取られないようにがんばりなさいよ‼︎」
「ん、ぶりっ子も頑張れ」
取られないように頑張るって、何を頑張れば良いのだろうか。
「ぶりっ子ってあたし⁉︎ってかこの状況だとあたししか居ないよね⁉︎」
「ん」
「認めるの⁇ちょ、マジないからソレ‼︎あたしの名前知ってるでしょ⁉︎」
「知らない」
湊とモモ以外の名前…多分1人もわからない。
クラスメイトの名前覚えたところで、私に何の得もない。
「サキ‼︎わかる?サ!キ!覚えておきなさいよ‼︎」
「ん…努力はする」
「じゃ、あまり教室でイチャイチャしないでね‼︎」
そしてまた、去って行ったぶりっ子。
騒がしい。
でも…。
ぶりっ子…サキは実はイイ奴なのかもしれない。