歩いてきた道を30m引き返す。




うん、ここが正真正銘自分家だ。




「ただいま〜」

「あら?今日はどうしたの⁇」

「始業式」

「湊くんの家に帰ると思って、お昼ご飯準備してないわよ」




ここにも洗脳された人がいた。




夜の8時。




それがこの家の夕食の時間。




平日でも休日でも、私は夕食が始まる5分前にこの家に帰ってくる。




アイツが毎日その時間に送り届けてくれるから。




だからアイツの家には、私の部屋着があるし、教科書や参考書もある。




17年生きてきて、その8割以上をアイツの家で過ごしている気がする。




こんな生活を続けていたのだから、昼に帰って来た娘に昼食が準備されていなくても致し方ないのだ。




洗脳というものは、恐ろしい。