や、やっぱり行きたくないっ‼︎
わざわざフられに行きたくないよ…
「おい‼︎」
「ひぇぇええ‼︎」
「何無視して通り過ぎようとしてんだ、コラ」
「ご、ごめんなさいぃぃい」
嫌だ嫌だと思っていても、着いてしまうものなのです。
そして、彼の形の良い口から、その言葉を聞かなくてはならないのです。
「とりあえず座る」
「は、はい」
「…なんでそんなに離れてんだよ」
良茅が座ったのは良月くんの3m横。
悩んで悩んで選んだ距離だ。
でも良月くんは納得できなかったみたい。
少しだけ不機嫌が増してしまったようだ。
「こっち」
「ひゃぁっ‼︎」
腕を容赦無く引っ張られ、良茅がたどり着いたのは…
え?
…ぇぇえ?
い、良月くんのひ、ひ、膝の上⁉︎
「あ、あの…なんで、良茅…あたし…あたしは膝の上に乗ってるの?」
「別にいいだろ?」
「いや、で、でも…普通お友達はこんな風に座らないかと…」
「…………」
そこからは長い沈黙。
長い沈黙。
長い沈黙。
え、なんで?
どうして良月くんは、こんなにも綺麗な顔を、こんなにもマヌケな顔にしているのでしょうか…
「………は?」
「………え?」
「いや、意味わかったから俺に電話して来たんじゃねぇの⁇」
意味…
あぁ‼︎意味‼︎
「お友達…でしょ?ホワイトデーのお返しでクッキーをあげる意味って」
「いや、電話番号はアメに入れてたはずなんだけど」
「………え?」
「いや、だから、電話番号はアメの袋に入れてただろ?」
待ってください。
記憶を辿ります。
電話番号…
電話番号…
っっっ‼︎
そうだ‼︎
アメの袋に入れてあった‼︎


