「悪かったな、忙しいところ。ではまた」

謎の男はあっさりそう言うと小道の路地へと消えていった。

遼一は、あの男の家はこの辺にあるのだろうか?そんな事を考えながら自転車をこぎ始めた。その日から、男はコンビニに姿を現すことはなくなり、遼一の生活は少しだけ変化した。

男と出会った夜は、少し膨らんだ三日月が確かに輝いていた。




「ピピピ…」


昔の事を思い出しながらゲームをしていた遼一の足元で、無愛想な着信音が鳴る。携帯を見る。

「新着メール 1件」

「From:杏奈
 Sub:仕事です!!
 今夜9時にカフェ・ビートルに集合です。」

「ビンゴ!」

頭の中で予想した通りのメールが来たことにテンションが上がった遼一は、そのままの勢いでゲームを消し、寝る体制を整えた。

遼一は頭の中で「今が朝10時だから、19時まで。9時間は寝られるな」と計算した。



彼の昼夜逆転は治りそうも無い。