「なんすか!?いきなり!」

遼一は裏返ったような声で言った。その少しオーバーなリアクションに謎の男は少しおかしがっているようにも見えた。

「ごめんごめん。驚かせてしまったようだね」
「当たり前だよ!いきなり。あんたうちによく来る客だろ?何の用だ?」

遼一はバイトに遅刻しそうだということを思い出し少し早口で話した。

「まぁ、そうあせらないで。急いでいるようだから簡単に話すと、俺が聞きたいのは二つだけだ」
「な、何だよ、そんな説明がむしろいらねぇよ。もったいぶらずに言えよ」

「う~ん、コンビニで君のレジ見ていておもったんだけど、君ほとんどの商品の値段覚えててるよね。しかも、レジを通す前に頭の中で計算もしている。恐らくだが、君は記憶力が人よりも良いんじゃないか?」

遼一は驚いた顔で謎の男を見た。

「何でわかんの?確かに記憶力は良いと思う。暗算も得意だ。ただ、絶対的な記憶力とかじゃないし、まず興味がないと中々覚えられないし。だから勉強とかほとんど覚えられなかったぜ」

謎の男は少し口元を緩めて答える。

「やっぱりな。レジに商品を全部通す前から君は合計額を言っている。タイミングの差だが、君は合計額を言った後にレジを見て自分が言った合計額が正しいかを確かめているようだった。多少疑っていたんだけど、いや~、ホントに記憶力良いんだね、素晴らしいよ。しかもその曖昧さ加減が人間らしくて実に良い」

遼一は褒められて内心かなり嬉しがっていた。そしてバイトに遅れる覚悟もした。何にせよ、このまま訳のわからない状態でバイトに行くことは出来ない。ありえない。そして謎の男へ向かって言った。

「も、もう一つの聞きたいことって何だ?」