「何で、って…。隣の席の特権?」
「何で疑問系なんだよ…?」


彼女の言動に意味がないことくらい、充分わかっている。けど、今後の俺の“平穏な生活”を確保する為にも、彼女とはきちんと話しをする必要があった。


「あのなあ、舞歌…」
「いっただっきまーす!」
「少しくらい話しを聞きやがれーーっ!!」


俺の話しを聞こうともせず、弁当の包みを開く彼女。
そんな彼女に、大声で突っ込みを入れる俺。

交わすのは、小学生同士の口喧嘩のような幼稚なやり取り。そのやり取りを、クラスメート達は肴とばかりに楽しそうに眺めていて。


人と関わらない。そう決めて始まった俺の新生活はあっさりと壊され…

彼女のペースにいつの間にか巻き込まれ、必要以上に目立ってしまって。


望んだ日常とは掛け離れた日常。
けど、そんな日常を少しだけ、ほんの少しだけ、楽しんでいる俺も確かにいて…

十月後半のある日。
こうして、俺の本当の意味での“新しい生活”が幕を開けたんだ――