「…なあ、遠野さん」
「舞歌」
「…舞歌」
「うん?何?」
「迷惑なんだけど」


向けるのは拒絶の言葉。拒絶の視線。

関わりたくなかった。深い付き合いを、今は、したくなかった。

ここで受け入れて流されるより、冷たい人間と思われてもいいから関わりたくなかった。
だから冷たい言葉を、視線を向けた。こうすれば引くと思っていたから。

けど――


「知ってるよ。迷惑なのは」
「…え?」


――返ってきたのは予想すらしなかった言葉で。
冷たい言葉と眼差しを向けたのにも関わらず、彼女は笑顔を向けていて。


「君が迷惑がっていることも、人と関わりたくないって思ってることも、知ってる」
「―っ!?」


俺の内心を言い当てられ、驚き、改めて彼女を見返す。
彼女は相変わらず笑顔ではあったけど、俺の反応を見て、楽しんでいるようだった。