「なあ、遠野さん…」
「あ、舞歌でいいよ。みんなそう呼んでるし」
「…なあ、舞歌さん…」
「同じ学年なんだから、さん付け禁止」
「……舞歌」
「ん?なあに?」
「…何でいきなり握手をしなきゃいけないんだ?それに、何で机をそんなに近付けてくるんだ?」


馴れ馴れしくしてくる彼女に、うんざりした表情を隠さずに、そう告げる。
人と関わる事に関しては諦めてる。でも、最低限の人付合いしかしたくなかった。
だから彼女みたいに、馴れ親しんでこようとする人には、“それなりの対応”をしようと決めていた。


「握手するのは友達になりたいから。机を近付けるのは近くに行かないと握手出来ないから」


そんな俺の思惑を気にすらせずに、彼女はそう言い切り、さらに机を寄せてくる。
初めは一メートル近くあった距離が、今では既に残り数十センチになっていた。