「櫻本くん、これありがとう」
授業が終わり、
櫻本くんから借りた教科書を返す。
「別に」
相変わらず無表情で冷たい態度だけど、
すっかり怖いイメージなんて
なくなっていた。
「今度、お礼させて?」
むしろ、優しい人に思える。
こんな発言をした自分にびっくりした。
クラスの皆も、目を見開いて
こっちをジッと見ていた。
「は?いいよ、そんなの」
「良くないよ。
櫻本くん授業できなかったでしょ?」
そういうと、櫻本くんは黙り込んだまま私の目を見つめた。
思わずドキッとする。
「…俺、怖くないの?」
やっと開いたと思えば、その口からは
以外なことを発した。
「…怖い?」
「俺、怖いって思われてんだろ?」
確かに。
私もついさっきまで怖かったし。
でも…
「怖くないよ」
もう怖くない。
だって、君の優しい一面を
知ってしまったから。
