「教科書開けー」
新しい席になって初の授業は、
私の苦手な数学。
「めんどくさっ」
教科書を開くたびに
飛び込んでくるのはまるで何かの暗号。
あぁ、今日もまた…
「…あれ」
と、机の中を探るが
数学の教科書が見当たらない。
あ、忘れたのか。
これで授業さぼれる♪
…ってちがーう!
「どうしよ…」
ただでさえ出来ないのに
授業受けなかったら…。
あー、もう先が見えないよ。
「…ん」
なんて頭を抱えて悩んでいたら
目の前に教科書が差し出された。
「えっ」
「俺、いらないから使って」
それは、まさかの櫻本くんからだった。
「でも…」
「お前馬鹿そうだし、遠慮するな」
決してこっちを向く事はなかったけど
櫻本くんの耳が微かに
赤くなっているのがわかる。
「…ありがと」
あ、櫻本くんもこんな表情するんだ。
なんだ。
皆と変わらないじゃん。
