「…おい、誰だよ~携帯音切ってないのは!」




「す、すいません。私です」








慌てて手を上げれば、クラス中の視線の的になってしまった。

いつもならそんな恥ずかしい事しないけど、今は別。



早く…行かないと…。






「櫻井か…。電源切っとけよ」



「……すみません。早退します」






まだざわつく教室を私は、無言で帰り支度を手早く済ませて、出て行く。


「さ、櫻井!? おい、櫻井!!」



先生に呼び止められる声が廊下に響くけど、私は早歩きから次第に駆け足になる。



校門に出る間に近くのタクシーを呼んで、下駄箱で靴に変えようとした瞬間、そこに納められていたモノに私の思考回路はピタリと止まった。