「……お取り込み中の所、すまない」




背後から聞こえて来た、兄さんの声に私は慌てて先輩から飛び跳ねるように離れた。



「にっ、兄さん!?」





兄さんは、私をちらりと見て、小さく溜め息を吐いた。

…うぅ…、こんな所を見られるなんて…。


「何すか?」


「里莉。アメリカの事だが…、お前は来なくていい」


「…え?」


突然の兄さんの言葉に、私は驚くだけ。


だ、だって…、私だけ、アメリカに行かなくていいって。





「お前をアメリカに行かせようとしたのは、新堂と結婚させようとしたからだ。
今のお前がアメリカに行く理由がない。理由がない以上、学校には正面に行って卒業しろ。その後の進路は、お前の好きにすればいい」