バイトの事がバレたら最悪、学校を退学させられちゃう。



それだけはダメ…。

そんな事されたら…。


「…わ、私をからかって…楽しいですか…?」

「まさか!? 里莉があんな所でバイトしてたなんてビックリしてさぁ…ダメじゃねぇの?」



近付く顔に私はますます、顔を下にして体を固まらせる事しか出来ないでいる。



私は、完全に追い込まれた草食動物と化していた。


ジリジリと近付いてくる先輩に本棚と言う壁に追い込まれているため、私には逃げ道がない。


「バイトの事、ばらされたくないだろ? …なら、俺と付き合えよ」

…何て勝手な事を言うんだと言いたかったけど、今の私には選択の余地はなくて…。

「………………わ、わかりました…」



残された選択に、私は嫌々ながらも頷いた。


「…へぇ…。以外とすんなり…」




私の頭の上でポツリと何か言ったけど、聞き取れなくてきょとんと先輩を見上げた。…やっぱり、首が痛くなりそう…。


そう思っていたら、スルリと先輩が私の髪を解いた。


「…ぇ、あ…?」
「俺と会ってる時は、髪を解いといて…」



クスクスと笑いながら先輩は私の手首に髪止めゴムを返してくれて、そのまま先輩はその場を立ち去った。