櫻井里莉(さくらい さとり)は、毎日を地味にすごす事に喜びを感じていた。



…そう、あの日までは……。





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「櫻井里莉さん。ずっと前から気になってたんだ。よかったら付き合ってくれないかな?」


昼休憩、誰もいない図書館で本を借りようとした私の前に現れた人物は満面の笑みで声を掛けて来た。




第一印象は、人懐っこそうな笑顔だと思ったけど、彼の口から出た言葉に私は眉を潜めて彼…樋高礼司(ひだか れいじ)を見上げた。その瞬間、私は自分の首が痛くなりそうで嫌だと思った。




同時に、目の前の樋高…先輩(一応、先輩だから言うけどさ…)が自分とは何もかもが真逆の人物と言う事もあって、拒絶反応を感じてあとずさってしまう。