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「次! スタートっ!」



顧問の任御の声で、2人の生徒が美しく泳ぎ始めた。


初めこそ互角かと思われたが、だんだんと両者の距離が開いていく。



きらきらと光が反射する水面。


真っ白で明るい壁。


国内でも有名なこの学園のプールには、国内でも有名な人魚姫がいる。



プールサイドでは、息を飲みながら誰もが2人を見守っていた。



ちょうど人ひとり分程の距離を保ったまま、2人が順番にゴールを決める。



「ありがとうございます」


「こちらこそ。楽しかったです」



しっかりと両足をついた2人は、にっこりと微笑み合った。



その様子を、プールの外から1つの影が見守る。



影は眩しく気高いその笑顔を、温かく見つめていた――――