放課後、王姫ルームに到着した姫羅は、部屋の中にいた王輝を見て目を見開いた。


荷物を部屋に置きに行った時には気付かなかった物音の招待は、あまりにも以外で衝撃的である。



「遅かったな、姫羅」


「な、にを……、やっているんですの?」


「何って、見ればわかるだろ? 料理だ」



当たり前のようにそう言った王輝の制服の上には、紺色のエプロンが付けられている。


シンプルなデザインは、王輝にとても似合っていた。



だが、初めて見た姫羅にとっては、その姿はただの驚きの材料でしかない。



「初めて作ったから出来については保障はできないが……まぁ、俺が作ったんだから問題ないだろ」



そう言って中央の丸いテーブルに並べられたのは、マフィンと姫羅用のココア。


ソファーに座ることも忘れたように、姫羅はぼーっとそれらを見つめた。



自分用にブラックコーヒーを用意した王輝が、いつまでも座らない姫羅に、不思議そうに声をかける。



「座らないのか? 食べたら感想も聞きかせてくれ」


「え、えぇ。わかりましたわ」



素直に座った姫羅は、そのまま大きな皿に並べられたマフィンに手を伸ばした。