「そ、そんな軽々しく言わなくても……。あたしがどれだけ怖かったか……」


「そんなの知らないわよ。でも、悪かったわね。もうこんなことしないわ。申し訳なかったとも思ってる」


「え……」


「だから、もうそんな顔しないでくれる? あなただったら、明日から普通に笑顔で過ごしてれば、みんな何もなかったように接してくれるはずよ。
何にも心配することなんてないわ。悔しいけどね」



宇率来女は小さく笑った。


少し淋しい影をまとっているように見える瞳は、起こっていた事件の虚しさを物語っているようだった。



「そう……あなたがそう言うなら……。本当に、もう何もしない?」


「しないって言ってるでしょ? しつこいわね」



気分でも害したかのようにそう言うと、宇率来女はくるりと安出泉に背を向けた。



「あなた達も、これで満足でしょう?」


「安出先輩がその軽い謝罪で満足ならな。もちろん、こっちの条件は守ってもらわないと困るぞ?」



王輝は、カメラを片手ににやりと笑った。


それを見た宇率の顔から、血の気が引いたことは言うまでもない。



「当たり前よ! あなたの本性はバラさないから、ご心配なく!」



そう言い捨てると、宇率は扉に向かって歩きだした。