「あたしにだってね、良心はあるの。あたしに興味がなさそうな人を無理に落とそうとなんてしない」
「ちゃんと、考えていらっしゃるんですのね……」
「もちろんよ。でも、そうじゃなかった場合は遠慮なんてしない。
だから、府林透にはがっかりよ。人気者カップルの片割れがあんなにバカだなんて……。そんな彼を選ぶあなたもよっぽどバカよ?だから、そのバカさ加減に呆れちゃって……。
こんな奴があたしよりも評価されてるなんて許せなくて、とことん壊してあげようと思ったの」
宇率の言い分も、わからなくもない。
負けず嫌いな性格でもあるのだろう。
自分は力の限り、勉強にも部活にも、外見を磨くことにも力を入れてきた。
それなのに、部活の成果だけで周りの人気を自分以上に持っていく人間がいる。
目の前に、2人も……だ。
『努力は必ず報われる』と訴えながらも、それを言う人間が平気で努力を見逃す場合も少なくはない。
故に、“他人からの評価”は、とてもいい加減なものであると言えるのかもしれない。
それをわかっていながら、それを得ようと努力しなければいけない状況に追い込まれていた宇率は、何を思っていたのだろうか。
彼女の気持ちを理解できる者など、この場にはいない。
「面白いように壊れてくれたわね、あなた。それにもびっくりしちゃった!
本当はね、もっと徹底的に壊してあげたかったんだけど……この2人に止められちゃったわ。あたしもやりすぎたみたいね……」


