「この人が、あなたに手紙を送っていたんですよ。元カレの彼女なんですから、よくご存じでしょう?」
丁寧でありながらも、少しにやりと笑いながら王輝が言った。
「え……ちょっと待って……。どういう、こと?」
戸惑う安出泉に、王輝に急かされた宇率来女が口を開く。
「どういうことじゃないわ!……そういう、ことよ」
「え?」
「許せなかったの! あなたなんて水泳しか取り柄がないじゃない!それなのに友達もたくさんいて、彼氏も格好良くて……。
あたしは勉強だってスポーツだってそれなりにできる。料理もできる。そのためにちゃんと、努力だってしてきたのよ。
でも、……でも駄目なのよ」
少し影になった宇率来女の表情には、諦観が見え隠れしていた。
何に対しての、だろうか。
どうしてだろうか。
その理由は、宇率以外の3人の誰にもわからない。
「あたしって、美人じゃない?だからいつも、有りもしない妄想で行動を制限されるの」
「自分で言うなよ、お前……」
「仕方がないじゃない!本当なんだから。そのせいで、『恋愛経験は豊富なはずだ』とか『真面目に勉強するタイプじゃない』とか、勝手にイメージを作られて……。
そんな風に思われてるから、あたしの周りに寄ってくる人間もそんな人ばっかり。だからあたしは、妄想されたあたしとして振る舞うしかなかった」
「そんな……」


