「いきなり水泳部に入ってきて、普通に練習に参加して……。
美人で頭も良くて、みんなから慕われてるあなたが水泳部に入ってきたら、実力だけで成り立ってる私の立場だって危ういだろうって思ったら、もうどうしようもなくって……」


「その辺でやめていただけますか? 安出泉先輩」


「え?」



流れ続ける安出泉の言葉を、王輝の声が遮った。



自分達以外に誰もいないと思っていたところに突然現れた男子生徒を見て驚く安出泉とは対照的に、姫羅がその様子を静かに眺める。



部活に使われている道具が並ぶ棚の影から出てきた王輝は、凛とした姿勢と声で話し出した。



「あなたの不安な気持ちはよくわかりますが、それをぶつける相手は、少なくとも、姫羅ではないはずです。
それでは、何の解決にもならないでしょう」


「い、いや……あの……」



口籠もる安出を見て、王がは呆れたような顔をする。


そして、さっきまで自分が潜んでいた物陰に声をかけた。



「……っ、!」



気まずそうに姿を現した人物を見て、安出が小さく息を吸い込んだ。



「宇率……来、女さん?」



奮える声に、今度は宇率がびくっ、と体を揺らした。