「誰から来たのかもわからない。こんなことを気にしてるなんて……ってバカにされそうで、誰にも相談できない。それでも、手紙は自分の惨めな部分を次々に指摘してくるの!」


「安出先輩、落ち着いて下さい」


「だんだん精神的にもまいってきちゃって……。大会が近いからそのプレッシャーもあって……。それなのにタイムはのびなくて!」



安出泉の声は、もう叫びに近くなっていた。


蓄めに蓄めた不満や不安は、止まることを知らないらしい。



涙混じりに話す彼女のシルエットが、物陰に潜む2人にも鮮明に届いた。



「毎日が怖かった。朝が来るたびに、いろんなものに怯えたの。クラスメイト。友達。透。先生。大好きな水泳にまで!
みんなが私をバカにしてるんじゃないか? 見下してるんじゃないか?
毎日、毎日、あることないことに疑いもかけて……。そんな自分がまた嫌になって……」


「辛かったんですのね」



眉を下げた姫羅を、安出は思いっきり睨み付けた。



「当たり前じゃない! “乙戯学園の姫”なんて呼ばれてちやほやされてる亜須賀姫羅には、あたしの気持ちなんてわからないでしょうけどね!」



完全な八つ当たりだ。


問題がすり替わってるな……――――



睨まれた姫羅は、思わず肩を強張らせた。