「安出先輩!」


「亜須賀さん……。
どうしたの?こんな所に、よ、呼び出して……。昨日はいきなりプリンをもらっちゃったし……」



部活が終わってから、姫羅は安出泉を呼び出した。


静かなプールサイドに、震えたような安出の声が響く。



プールを選んだのは、安出にとってここが、最も自身をさらけ出せる場所だと考えたからだ。


誰もいないプールは、小さく弱々しい安出泉の声を聞くにも十分だった。



「先輩、最近になってから奇妙な手紙を受け取っていらっしゃいませんでしたか?」


「えっ?……ど、どうして、それを?」



びっくりして目を丸くする安出に、姫羅がそっと微笑みかける。



「今日たまたま、安出先輩の机に可笑しな封筒を入れようとする方を発見しましたの。
その方の様子がとても普通には見えなかったもので……」


「それで?」


「勝手だとは思いましたが、封筒の中身を確認致しました。先輩への罵詈雑言が書き連ねてありましたわ」