「授業中なんだし、もう少し気楽にしたらどうだ? 疲れるだろ」



ロッカーの隙間からあたりに誰もいないことを確認してから、王輝が不満そうに呟いた。


それを見て、姫羅がますます不機嫌になる。



こんな状況で気楽にできるなんて、どういう神経をしていますの?



狭いロッカー。


触れることを避けられない体。


長時間立ち続ける苦痛。



状況の全てが、姫羅を悩ませる原因になっている。



休憩のために、タイミングを見計らって順番に抜け出すこともあるが、基本的にはこの、直立不動のひきこもり体勢を貫いている。



賢い2人なのだからもう少し別の方法を思いついても良いとは思うのだが……。



昼間で視界もすっきりとした校内では、仕方があるまい。



姫羅は、「はぁぁ……」と溜め息を吐いた。



そもそも、2人がこうなるきっかけは昨日の夜にある。