「王輝!狭いですわ! もう少しそちらに寄って下さい」


「あ?そんなもん仕方がないだろうが! こっちだってキツいんだよ。もう少し我慢……」


「お黙りっ! 静かに!」



いきなり力強く言い放った姫羅に、王輝が軽く溜息を吐く。


緊迫した空気を察して、王輝はそのまま言葉を飲み込んだ。



今2人がいるのは3-Aの教室。


…………に、接する廊下にあるロッカーだ。



縦長の、本来は掃除用具などを入れている金属性のロッカーである。


水泳部の部室にあるものと似ているが、それよりも幅は広い。



全ての用具を近くの別のロッカーに押し込んだのは昨日の夜のこと。


そのまま王姫ルームに泊まり込んだ2人は、朝一番にこの中に入った。



今日の授業は、もちろん、全て自主休講である。



私が王姫の仕事のために授業を休みたいと連絡を受けたのは、今朝のことである。


このことを報告した時の乙戯花氏の楽しそうな顔は……思い出しただけでもぞっとする。