「姫羅が練習に参加したのはほんの少しの期間だけなんだ。それで安出泉を復活させる道具に選ばれたんだから充分じゃねぇか?
他の水泳部員よりも、その素質と実力があったってことだろ」



そう言うと、王輝がまっすぐに姫羅を見つめた。



「道具というのは……少々あたくしに失礼ですわ」



不満そうに眉間にしわを寄せながら、姫羅が王輝を軽くにらんだ。


それを見て、彼がまた楽しそうに肩を揺らす。



王輝は決して、お世辞のような言葉を言うタイプではない。


少なくとも、素の状態では――――



「でも、王輝にそう言っていただけると心強いですわ。ありがとうございます」



それをわかっているから、照れる。


普段とは違う自分の様子を悟られたくなかったのか、姫羅は素早く俯いた。



「素直な姫も、なかなか良いじゃねぇか」



さっと素直に頭を下げた姫羅を、王輝は穏やかに見つめた。