「当たり前だ。何でわざわざ俺らが肉眼で見分けなきゃいけねぇんだよ。しかも、微妙に筆跡も変えてるみたいだからな。
適当な奴に任せてやらせる」


「適当な方とはどなたですか? 失礼ですわよ」


「探せばすぐ見つかるだろ。それに、一言余計だ。まぁ、姫羅がやりたいなら止めはしないが」



王輝は、そこまで言うと冷蔵庫に向かって歩き出した。


中から冷えたコーヒーの入れ物を取出して、氷を入れたグラスに注ぐ。



普段なら姫羅に頼んでいることを自ら行う姿からは、彼なりの姫羅への気遣いが感じられる。



「いるか?」と入れ物を傾ける動作で示した王輝に、姫羅は静かに首を横に振った。



「そう言えば、今日は安出泉と勝負したんだろ?」



王輝の言葉に、姫羅が眉を寄せた。



「勝負、と言いますか……。
あたくしと安出さんがタイムを競うことで、安出さんの闘争心や、勝負魂的なものを復活させようという御任先生の作戦だったのですが……」