明らかに不満そうな顔を見せた王輝に、姫羅が肩を震わせた。



「違いますわ。これは、安出さんに食べていただこうと思って作っているんですの。
彼女、プリンがお好きなんですって。ですから、これを食べて少しでも元気を出していただこうと思いまして……」


「なるほど……」


「はい。カスタードとチョコレートとストロベリーを用意致しましたの。王輝もおひとついかがですか?」



そう言いながら綺麗に微笑んだ姫羅に、王輝が言葉を詰まらせる。



「じゃあ、ひとつだけもらうよ。味は、任せる……」



王輝は、それだけ言うとくるっ、と方向転換をした。


そのまま、鞄と制服のブレザーを置きに、自分の部屋に向かって足を動かす。



「わかりましたわ。あっ、大事なお話がありますから、早く戻ってきて下さいね!」



歩き出した王輝の背中に、姫羅が楽しそうに声をかけた。