「王輝! 遅かったですわね」



王輝が王姫ルームへ行くと、姫羅はキッチンに立っていた。


てきぱきと動く様子から、何かを作っている途中であることは明かだ。



「あぁ。料理部が無駄に長引いてな」


「あら、無駄に、なんて言ってしまっては、部員の皆様に失礼ですわよ?」


「本当に無駄だったんだから仕方がないだろ。……ところで姫羅、お前、何やってるんだ?」



フリルのたくさん付いたピンクのエプロンに包まれた姫羅を、王輝は不思議そうに見つめる。


エプロンは、昨日クローゼットから引き出してきた戦利品である。



クローゼットから出てきた姫羅の表情を思い出て、王輝は思わず笑った。


よっぽど中で衝撃的なものを見てきたんだろうな――――



中にどのような洋服が準備されているのか知っている私でも、あれら全ての使い道を説明することはためらわれる。



「えっ? あぁ、プリンを作ろうと思いまして」


さらっ、と答えた姫羅を見て、王輝は眉をしかめた。


姫羅の傍には、カップやスケールなどがぎっしりと並べられている。



「プリン? まさか、それが夕食……?」