「でもそんなもん、あのバカでかいクローゼットの中にあるんじゃないか?
変人学園長のことだから、水着くらい準備してるだろ。ご丁寧に、サイズも無駄に豊富だぞ。きっと」


「水着なんてあるのでしょうか? 水着を使うお仕事なんて、普通は思いつきませんわ」



ウォークインクローゼットに向けて足を動かしながら、姫羅が言う。


この部屋を使うようになってから数週間経っているが、姫羅も王輝も、このクローゼットに入るのは初めてである。


制服のスペアや部屋着になりそうなものは各々の部屋に準備があったため、あえてクローゼットを使用する必要がなかったのだろう。



「絶対にある。それも、これでもかってくらいにフリルとかリボンが付いた、ピンクのビキニなんかがな」


「……あっても使えませんわ、そんなもの」


「あったら使わないともったいないだろ。せっかくなんだから」



肩を落とす姫羅の背中で、王輝が声を上げて笑う。


自信に満ち溢れたその様子に、姫羅の肩がますます下がった。



「いきますわよ」



小さくつぶやいてから、姫羅はクローゼットの扉に手をかけた。