「瑠に府林透を気に掛けるように頼んだんだ。あいつもサッカー部だからな。
しかも、監視なら瑠の得意分野だ」


「そういえば、王輝の監視をするのが浦島さんのお仕事でしたわね」


「まぁな。
瑠に任せておけば心配はないだろ。そのうちに、また様子を見に行けばいい」



そこまで言うと、王輝は壁に掛けられた時計に目を向けた。



1秒ずつ丁寧に動くそれは、午後の8時半を指している。


まだ冬が開けて間もないこの時期ならば、もうすでに、外も日が落ちているはずである。



「今日はもう遅いし、面倒だからここに泊るか? 俺はそれでも良いんだが……」



時計から視線をはずすと、王輝はそのまま姫羅にたずねた。


悩むようなしぐさをしてから、姫羅がそっと口を開く。



「そうしたいのは山々ですが……。
明日は水泳部の練習に参加するために、家に帰って準備をしなければいけませんの」


「なるほどな」



少し困った顔をする姫羅を黙って見つめた王輝は、はぁ、と溜息を吐いた。