さらっとそう言った王輝を見て、思わず姫羅が笑い出した。
「何だよ」
「同じような台詞を、御任先生がおっしゃっていたのを思い出したんです。安出泉に。
それでつい……」
口元に片手を当てながら笑う姫羅に、王輝がしかめっ面を返す。
「あんなおっさんと一緒にするんじゃねぇよ」
「お、おっさんというのは……、少し失礼なのではありませんか? まだ30代半ばですのに」
「そんなもん十分だろ」
姫羅の発言が相当不本意であったらしい。
頑なに表情を崩さない王輝を見て、姫羅が静かに肩を揺らす。
「つまり、宇率来女は非の打ちどころのない優等生であった……と?」
引かない笑いをこらえながら、姫羅がゆっくりと言葉を続けた。
話が先に進まなければ、王輝の機嫌も直らない。
深い息を落とすと、王輝はがばっと足を組んでからまた話し始めた。
「そういうことになるな。……まぁ、“表向きは”ってことになるが」