確かに、安出のタイムは奮わないかもしれない。


確かに、安出の表情は明るいものであるとは言えないかもしれない。



だが、それだけである。



このような状況なら、どなたにでも起りそうな気がするのですが……。



確かに普段の安出とは様子が違うのかもしれないが、そこまで取り立てて問題にするようなものでもないのではないだろうか。



それとも、他にも何か症状があるのでしょうか――――



上手く状況が飲み込めないのか、姫羅は小さく首を傾げた。


同時に、もう何度目かわからない溜息がこぼれる。



そのまま水泳部の練習を最後まで眺めた姫羅は、任御に挨拶をしてから、ゆっくりと王輝のいるであろう部屋を目指した。