「やっぱり、タイムがあまり良くないな」
「……すみません」
さまざまな声と共に、任御の声が響く。
「いや、謝る必要はない。とりあえず、まずは顔を上げろ」
痛々しく続く安出泉を励ますでも、叱るでもない任御の声に、安出がそっと視線を動かした。
おびえたように揺れる目に、姫羅が思わず眉間を固める。
「もうすぐ大会があることはわかってるだろ? いつまでもそんな辛気臭い顔でいられても困る。
安出だって、このままじゃ悔しいだろ?」
わざと明るく言ったのか……
にやりと笑う任御の人柄に感じられる穏やかさが頼もしい。
そんな任御の配慮に気づいた様子もなく、安出はまたうつむいた。
「とりあえず、タイムは徐々に戻していけばいい。
今は、その腑抜けた中身の方だけでもどうにかしてこい!」
「…………」
「返事くらいしろ。人間やめる気か」
「すみません」