笛の音やタイムをコールする声などが響く中、姫羅は辺りを見回した。


普段聞くことのない水を裂くような音も、姫羅にとっては新鮮で面白いものでもある。



「あの方が、安出泉さん……?」



偶然投げた視線の先。


水面からぱっ、と顔を出した女子生徒の姿を見ながら、姫羅は軽く首を傾けた。



姫羅から一番近いコースを泳ぐその生徒に、注意深く視線を送る。



……やはり、そうでうわね。


その顔がはっきりと確認できたところで、姫羅は小さく息を飲み込んだ。



帽子にすっきりと髪を入れているからか、目の前の安出泉に、写真で見た際よりもすっきりとした印象を覚える。



“水泳部”と聞くと、日に焼けた健康的な肌を思い浮かべがちだが、整ったプールの設備の影響もあって、安出泉の肌は透き通るように白かった。



その白い肌からは、何度も表彰されるようなパワフルな泳ぎが生まれるとは想像し難い。



むしろ、現在の弱弱しい泳ぎの方が、彼女の雰囲気に似合っているようにも感じられるから不思議である。



プールの中の様子を一通り目で追った姫羅は、安出泉の観察に努めた。