『常に笑顔を絶やさない……』



この条件にあてはまる人物を探すように言われたら、真っ先に宇率をその候補に入れるかもしれない。



表情が崩れたのはほんの一瞬。


それからすぐに立て直された宇率の笑顔は、作り物のように綺麗だった。



完璧であるとしか言いようのない宇率の笑みに寒気のようなものを感じながら、王輝が慌てたように言葉を続けた。



「あ、えと、……いえ。申し訳ないのですが……とりあえず!……あの、仮入部をしてみたくて」


「そういうことねっ! 今日からでいいのかな?」


「は、はい!」


「だったら、今日から5日間ね。
今日は家庭科室で煮物作りをするの。放課後に見に来てくれる?みんなにも紹介するから」


「あ、ありがとうございます!」



あたふたとしている王輝を笑いながら、宇率がまた口を開く。



「ところで君、名前は?」


「あっ、まだ言ってませんでしたっけ? 2―Cの宝子王輝です」


「そう。私は、宇率來女。よろしくね!王輝君」



しっかりとウインクをして見せた宇率に、王輝は苦笑いを返した。