「え?」
「まぁ、君みたいな地味な子が宇率の好みだとは思わないけど……」
「はい?」
目を見開く王輝を面白そうに眺めると、男子生徒は教室に向かって歩き出した。
そのまま、宇率に声をかける。
にこにこと男子生徒の言葉に頷くと、宇率はまっすぐに王輝のいる場所を目指して歩き始めた。
「あっ! 私を呼んでるのってあなた?」
顎に片手を添えながら考え込んでいた王輝に、宇率がきれいな笑みを浮かべながら話しかける。
“私”……、か――――
府林に話しかけていた時とは明らかに態度の違う宇率を見て、王輝は小さく笑った。
その様子を気味悪く感じたのか、宇率は一瞬だけ、頬をひきつらせた。
「はっ、はい……。あの、部長さんは風邪でお休みだって聞いたので……。
副部長の宇率さんに会いにきたんですけど……」
「なるほどっ! 料理部に興味があるのね?入部希望者かな?」
「あ、そそそうです!料理部……」