「勝兎、入りなさい」


「乙戯花氏。どのようなご用件で……?」



真っ白な、大きな扉の向こう側で

ショッキングピンクのスーツに身を包んだ乙戯花氏が、真っ白な椅子に座って微笑んだ。


そこで微笑む彼女よりも恐ろしいものを、私は他に知らない。



また何か思いついたのか……――――



彼女に気付かれないように小さく息を落としてから、私は深く頭を下げた。



「私が今回話す内容は、内密に遂行して下さいね」


「内密に……ですか?」


「えぇ。生徒はもちろんですが、先生方にも教えてはなりません」



珍しいこともあるもんだな……――――



彼女の服装から考えても


学園長室……通称、乙戯花氏専用ルームの内装から考えても


そのファンシー·シンドロームぶりから考えても



彼女が特別に目立つことや派手なものを好む傾向にあることは、目に見えている。



その乙戯花氏が何かを誰にも公表せずに行うとは………

これまでの経験からは想像ができない。