「ここか……」



姫羅が体育教官室で任御と話している頃、王輝は教室の前で足を止めた。



3-A。

安出泉、府林透、宇率来女の所属するクラスである。



「透ー!次の授業って数学だよね?
来女、わからない予習でところがあったから教えてほしいんだけど……」


「うーん、俺が解けるかはわからないけど……いいよ」


「やったぁぁ! ありがとう!嬉しいっ」



各々が自由に騒ぐ教室の中に、宇率の甲高い声が響く。


少し戸惑うように答えたのは府林である。



寄り添いながらドアの方へ歩いてくる2人を見て、王輝は思わず顔をしかめた。



「じゃあ、俺はちょっと先生のところに部活の用事があるから……。教室でちょっと待っててくれる?」



教室を出ようとする府林を見て、宇率が目を潤ませるようなしぐさを見せる。



「来女、待ってる。また後でね……」


「あぁ。数学は帰ってきてから見るよ」


「ありがとう」


にっこりと微笑み合う2人に視線を送ると、王輝は深い溜息を落とした。