「おぉー、体験入部か!」


「えぇ。以前から水泳には興味があったので……。大会前の忙しい時期にお邪魔してしまって、申し訳ありません」



王輝と相談した翌日の昼休み。


体験入部用の書類と共に現れた姫羅に向かって、目の前の任御は大きく笑った。


「別に構わないさ。あまり指導はできないかもしれないが、全員がきちんとトレーニングできるメニューになってるから退屈はしないはずだ。
姫が来てくれれば、水泳部も有名になっていいかもしれない」



任御伸央[とうみ のぶお]


新任でこの学園に来た彼も、今年で35歳。


黒い肌とがっしりとした体型は、何とも体育教師の彼らしい。



学生時代は、それなりに有名な水泳選手だったとも聞く。



「体験入部は5日間の決まりだったな。今日は練習の雰囲気を掴むために、プールサイドで見学な。ずっと立っている必要はないから、ベンチを自由に使ってくれて構わない」


「はい」


「明日からは、水泳に必要な道具を一式準備してきて部員に混ざってもらう」


「ありがとうございます」



深く頭を下げた姫羅を見て、任御は満足そうに頷いた。



「この学校は水泳の授業がないから亜須賀の実力がわからないんだが……どうなんだ?」


「幼い頃にスイミングスクールに通っていたことはありますが……。誇れるほどのものではないと思います。
安出泉さんのようにはいきません」