「宇率は料理部だ。告白は、手作りの料理……違うな、“お菓子と一緒に来女の気持ちも受け取って”だそうだ。
今では休み時間ごとに教室でくっついている程のバカップルらしい」



話を聞き終わった姫羅は、眉間にしわを寄せた。



別れてからたった2週間しか経っていない彼女のいる教室で、どうしてそこまで堂々と新しい彼女と過ごすことができるとは……


府林透の考え方に少々納得できない部分があるのは、私だけだろうか。



「どう考えても、原因は府林さんと宇率さんですわね」


「あぁ。そうは言っても、2人を別れさせるわけにもいかないしな……。
俺達に話がくるくらい安出泉の様子がおかしいなら、もっと複雑な原因があるのかもしれない」


「えぇ。とりあえず、どうにかして安出泉達に近づかなければいけませんわね」



そう言って考え込む姫羅の奥で、オーブンがシンプルな機械音を響かせた。


くるっと振り返る姫羅を見て、王輝がにやりと笑う。



「そうだな。とりあえず安出泉の話はいったん保留にして、夕食の準備を頼む。
そろそろ待つのも疲れてきたしな」


「待つって……調べた結果を聞かせにいらっしゃったのは、王輝でしょう」



小さくつぶやいた姫羅を見て、王輝がまた、楽しそうに笑う。


そんな王輝を軽く睨み付けてから、姫羅はすっと立ち上がってキッチンへ向かった。