「どうぞ」



王輝のことだ。


姫羅が許可を出さなくとも、勝手に話を進めていたはずである。



悔しそうに表情をゆがめる姫羅を少しだけ視界に入れてから、王輝は視線を資料に戻した。



「前回のテスト成績は320人中298番。典型的なスポーツバカだな。大学もスポーツ推薦を狙っているらしい。
仲が良い人間は同じ水泳部の芝麻唯[しばあさ ゆい]。3-Eだ」


「芝麻さんも、朝礼などで名前をお聞きしたことのある方ですわね」


「あぁ、そうだな。
ちなみに安出は、2ヵ月前に3-Aのサッカー部の府林透[くらばやし とおる]と別れてるらしい」


「恋人がいらっしゃったのですか?」



やわらかい問いかけに、王輝が軽く頷く。



「府林透の頭は安出泉より些かマシだ。でも、部活での成績は特に良いわけでもないな。
別れを切り出したのは府林透で、理由は『お互いにとって恋人関係でいるメリットがないから』だそうだ」


「何だか、あっさりしてますわね……」


「そりゃ、あっさりもするだろ。府林透はその2週間後から、同じ3-Aの宇率来女[うすい くるめ]と付き合い始めってる」



その言葉に、姫羅は思わず目を見開いた。



「それって……」