「ちなみに、眼鏡も伊達」


「い、一体、どういうことですの!? 何故、そのようなことを?」



王輝は相変わらず、飄々としてる。


その傍で、驚きを隠すことも忘れているのか、姫羅はぽかんと口を開いたまま固まっていた。



「親父の命令なんだよ」


「命令……、ですの?」



予想外の言葉に眉間にしわを寄せた姫羅を見て、王輝は困ったように笑った。



「俺、小さい頃から自己中心的だの傲慢だのってさんざん言われててさ。性格が悪いって親戚中で評判になって……。

そしたら父親が、家の中ではどうでもいいから、外ではきちんとしろって言ってきて。『学園内で気弱で有名になるくらいになれなきゃ即見合い』だってよ。
小学生の時にだぞ? あり得ないだろ」


「即お見合い……ですか。それは、政略結婚ということになるのでしょうか?」


「ま、どこまで本気なのかはわかんないけどな」



王輝の父親は、国内でも有名なホテルを経営する会社の社長だ。


そう考えると、この話も全くの冗談というわけではないんだろう。



苦笑いを落ち着かせてから、王輝は姫羅に視線を移した。



「……俺がいつも一緒にいる、浦島瑠[うらしまりゅう]はわかるか?」